不動産売却において、権利証・登記識別情報が無い場合の対処法として、次の3つがあります
事前通知制度
法務局から、登記義務者に対して
「登記の申請がありましたが、間違いありませんか」
との内容の通知が郵送で届きます
これに対して、受け取った本人が署名・押印(実印)をして、法務局へ返送します
法務局が通知を発してから、2週間以内(海外へ通知が発送された場合は、4週間以内)に、法務局へ通知が返送されなければ、登記申請は却下されます
そのため、通常、売買では使用されません
なぜなら、買主が売買代金を支払ったにもかかわらず、通知が期限までに法務局へ返送されなければ、登記が完了しないからです
資格者代理人(司法書士)による本人確認
司法書士が本人と面談をして
「本人で間違いない」
ということを確認します
これを、「本人確認情報」として、登記申請に添付します
売買では、通常この方法をとります
公証人による本人確認
登記申請時の委任状を、公証役場に持っていき、公証人の面前で、その委任状に本人が署名し、さらに公証人が「本人で間違いない」という認証をする制度です
つまり、司法書士の代わりに、公証人が本人確認をするわけです
実際にあったケース
先日、売買なのに、事前通知を利用するケースがありました
事務所でも初めての経験だったそうです
そもそも、なぜ登記識別情報が無かったかというと
登記名義人が死亡し、相続人が6人でした
銀行の抵当権が設定されていたのですが、支払いが滞っていたため、抵当権者の代位によって、法定相続分による相続登記がされたからでした
そのため、登記識別情報が発行されませんでした
所有者が6人の共有
そのうち3人が海外居住(国籍は日本ですが、日本語は話せません)
しかも、そのうち2人が未成年者
もし、②の「司法書士による本人確認」をとった場合
本人と直接会わなければならないため、飛行機代など、費用がものすごくかかってしまいます
しかも、海外居住の3人は、日本語が話せないため、通訳なども必要になります
もし、③の「公証人による本人確認」をとった場合
登記義務者の居住地、つまり、海外の公証役場でする必要があるため、これも使いにくい
ということで、買主(不動産会社)の了承を得たうえで、事前通知ですることになりました
海外の3人については、英語が話せる弁護士が代理人となって、委任状や登記原因証明情報など、必要書類をすべて手配してくれました
事前通知が発送された際も、こまめに連絡をしてくれたので、通知が本人に到達後、迅速に返送することができました
そして無事、事前通知は期限内に法務局へ到達し、登記は完了しました
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